医薬品や食品、環境分野での実験されている方は仕様する機会が多い限外ろ過膜に関して、製品の紹介をしていきます。
主要なメーカーといえば、メルクミリポア、ザルトリウス、日本ポールだと思います。
使用するサンプルによって製品は異なりますが、各メーカーの概要や製品が一覧で調べられると便利ではないでしょうか?
欠品することも多いこの製品群に対して、少しでも商品検索が楽になればとまとめていますので、
是非検討の際に活用してくださいね!
あまり使い馴染みのない方にも向けて【限外ろ過膜とは?】【選び方のポイント】等を先に記載しています。
すでに知っている方は目次の【取り扱いメーカー一覧】へジャンプしてください!
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限外ろ過膜とは?仕組みや原理を簡単に解説!
限外ろ過膜(げんがいろかまく、英: ultrafiltration membrane)とは、ろ過膜の一種。英語の頭文字からUF膜とも、直訳をとって超ろ過膜とも呼ばれる(なお、限外とはultraの古典的な訳語)
孔径は概ね0.01~0.001μmで、逆浸透膜(RO膜、NF膜)より大きく精密ろ過膜(MF膜)よりも小さい。ただし、孔といっても精密ろ過膜のような孔は電子顕微鏡で観察しても見られず、阻止率90%に相当する分子量から表したものであり、分離は物理的なろ過よりも、溶質分子量の大きさに対する「分子ふるい」効果に基づく。
引用元:Wikipedia
限外ろ過膜は主に高分子化合物や微粒子を分離・除去することに用いられ、微細な孔が開いた膜で、その孔径によって、膜を通過する溶質のサイズを制御することが可能です。
限外ろ過膜の原理は、溶液中の溶質が、膜の孔径よりも小さい場合には自由に通過し、膜の孔径よりも大きい場合には、孔を塞ぎ込むことで膜の表面に付着します。
このようにして、溶質の分画分子量によって、膜を通過する溶質を選択的に分離することができます。
簡単に言うと名前にろ過とついているぐらいなので、個体と液体を分離させるためのものですね。
コーヒー淹れるときに、フィルターを使って飲むときと極論同じイメージです。
限外ろ過膜の種類と選び方のポイント!
膜の種類によって「粗ろ過」「精密ろ過(Micro-Filtration: MF)」「限外ろ過(Ultra-Filtration: UF)」「逆浸透(Reverse Osmosis: RO)」に分けられます。
主な分け方は下記のようなイメージです。
引用元:https://m-hub.jp/analysis/705/basic-of-ultrafiltration
- 粗ろ過(>10 µm)
捕捉:赤血球、花粉、毛髪
透過:微生物、微粒子
用途:粒子除去/捕捉、試料の清澄化、前ろ過- 精密ろ過(0.05~10 µm)
捕捉:微生物(酵母・大腸菌)、微粒子
透過:タンパク質、ウィルス、マイコプラズマ
用途:粒子除去/捕捉、細胞培養・分析、ろ過滅菌- 限外ろ過(1 nm〜0.05 µm)
捕捉:タンパク質、ウィルス、マイコプラズマ
透過:糖、アミノ酸、塩
用途:ウィルス濃縮、タンパク質濃縮、核酸精製- 逆浸透(<1 nm)
捕捉:糖、アミノ酸、塩
用途:水の純化、脱塩
分画分子量を決めよう!
精密ろ過膜の孔径は●●μmというように長さの単位で表され
限外ろ過膜の孔径の大きさは●●kDaというように分子量で表されます。
また、この数値の部分を分画分子量(NMWL)といいます。
また、MWCOとの表記も目にしますが、
NMWLとMWCOの違いはそれぞれ分画分子量を示す単位ですが、計測に異なる意味を持ちます。
MWCOは、「分子量カットオフ」(Molecular Weight Cut Off)の略称で、限界濾過膜の分離能を表す指標です。MWCOは、限界濾過膜が通過できる最大の分子量を示します。
NMWLは、「ノミナル分子量限界」(Nominal Molecular Weight Limit)の略称で、製造メーカーが製品の性能を表すために使用する指標です。NMWLはMWCOと同様、限界濾過膜が通過できる最大の分子量を示しますが、MWCOと異なり、実測値ではなく、製品の仕様として設定される値です。
MWCOは限界濾過膜の性能を表す指標であり、NMWLは製品の仕様を表す指標として使用されます。
MWCOとNMWLの値は一般的に近い値に設定されることが多いため、混同することもあるので注意が必要です。
基本的に限外ろ過の孔径は、分画できる分子量 (分画分子量, MWCO)で示されます。
●1K = 1000 Da
●3K = 3000 Da
●10K = 10000 Da
●30K = 30000 Da
●100K = 100000 Da
また、Yahoo知恵袋でこのような質問をされていましたので紹介します。
Q:キロダルトン(kDa)っていうのは分子量のことですよね? でも分子量の単位はg/molじゃないんですか? また、kDaからg/molに変換することは可能ですか?
A:g/molは1モルあたりの分子の質量を示すのに対して、ダルトンは原子の質量そのものを指します。
1モルあたりの水の質量 : 18g/mol * 1mol = 18g
1分子の水の質量 : 18Da = 18 × 1.66×10^-27kg
よって、単位系が異なるので厳密には変換できませんが、値としてはそのまま用いても特に問題が起こることはないと思います。 その場合、Da = g/molで値が等しくなります。
kDaは1000Daを示します。
引用:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10120067500
また、タンパクの分子量換算に関する便利ツールを最後に紹介します。
【Protein Size(kDa*)】【μg of Protein】【pmol of Protein】の3項目を入力するだけで
計算ができるツールとなっています。
便利ツールは時短のためにも使いこなしていきましょう!
膜の種類を決めよう!
分画分子量が決まったら次は膜を選定していきましょう!
代表的な膜の特徴をまとめていますので、参考にしてくださいね。
膜材質 | 限外ろ過用途 | 精密ろ過用途 |
---|---|---|
ウルトラセル(再生セルロース(PL))(メルク) | ◎ | △ |
ポリエーテルスルホン(PES) | ○ | ◎ (高流速) |
PVDF(メルク) | △ | ◎ (タンパク質低吸着) |
Hydrosart RC膜 (ザルトリウス) | △ | ◎ (低吸着・高回収率) |
オメガメンブレン(日本ポール) | ◎ (低吸着・高回収率) | △ |
取り扱いメーカー一覧
※横に見切れている場合は横スクロールしてご覧ください。
SHIFTを押しながら、マウスのホールをまわしてもらうと横スクロールが簡単にできます。
マウスにホイールがない方は、マウスパッドを二本指で触りながら横に動かしてみてくださいね。
メーカー | メルク | ザルトリウス | 日本ポール | アプロサイエンス |
商品名 | Amicon Ultra | Vivaspin | 遠心ろ過デバイス | 限外ろ過スピンカラム |
メンブレン材質 | ●ウルトラセル(再生セルロース) ●ポリエーテルスルホン(PES) ●PVDF | ●ポリエーテルスルホン(PES) ●セルローストリアセテート(CTA) ●Hydrosart | ●オメガメンブレン ●バイオイナート ●スーポアメンブレン ●GHPメンブレン | ●ポリエチレンサポート付き タンパク吸着性 修飾ポリエーテルスルホン |
サンプル容量 | 1ml~70ml | 50μl~20 ml | 50μl~60 ml | 50μl~500μl |
ろ過スピード | 5分~30分 | 最速5~10分 (20倍濃縮まで) | 限外ろ過:30-90分 精密ろ過:1-3分 | 5〜10分間 |
分画分子量 | 3KDa~100KDa | 2KDa~100KDa | 1KDa~300KDa | 3KDa~300KDa |
各社紹介
メルク/Amicon Ultra
特徴
●国内シェアトップクラスのシェアを誇るメーカー。
●希薄サンプルであっても迅速かつ高回収率を実現。
●高感度なダウンストリームアプリケーションに適した、迅速で効率の良い濃縮を実現。
●パッケージに8個入り、24個入り、96個入りと幅広く準備。
ろ過膜
膜材質 | 限外ろ過用途 | 精密ろ過用途 |
---|---|---|
ウルトラセル(再生セルロース) | 最適 | 不適 |
ポリエーテルスルホン(PES) (例:Biomax® メンブレン、 ミリポアエクスプレス プラスPES) | ウルトラセルの次に適切 | 最適(高流速) |
PVDF | 不適 | 最適(タンパク質低吸着) |
仕様
容量をクリックすると各製品詳細ページへ飛ぶことができます。
製品一覧は【ご注文情報】からご確認ください。
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メルク製品は下記URLにある【Interactive Product Selector】という欄から
ターゲット等を入力していくだけで、製品を自動選択してくれるセレクトツールもあります。
こちらの製品には適合する遠心機が各製品によって決まっています。
初めて購入される方や、遠心機を買い替えた方は注意してくださいね。
【遠心デバイスの遠心機とローターの適合性】
もし、タンパク質の調製で、扱いの難しいカラムや、透析を使って何段階もの移し替えを行っているのであれば、データにばらつきが生じてしまう問題があるかと思います。
そんな方は【アミコンプロ精製システム】を活用くださいね!
ザルトリウス/Vivaspin
特徴
●高流量の膜と多溝デバイス構造によって,他社製品と比較してろ過時間を大幅に短縮(約1/2)。
●過遠心によるバッファー涸れを防ぎます。
●高速遠心に耐久可能なポリカーボネート(PC)製容器により,さらにろ過時間を短縮可能。
●確実な回収量を得られるAngular Dead Stop Pocket構造を採用。(Vivaspin Turbo)
●最速・最大濃縮(20倍濃縮まで最速5~10分),最高回収率(>95%)実現。(Vivaspin Turbo)
●耐薬品性がさらに向上し,1N NaOH洗浄でパイロジェンの除去が可能です。(Vivaspin Turbo)
ろ過膜
- ポリエーテルスルホン(PES)膜:親水性,疎水性のいずれの相互作用も示さず,ファウリングが少なく,高流量が取れる,広範囲のpH に使用できる特性を持つ,一般的な用途に適した膜です。
- セルローストリアセテート(CTA)膜:高い親水性を持ち,非特異的吸着が非常に少ない膜です。本来通過すべき小さい溶質を捕捉したり,吸着するような膜支持体は使用していませんので,試料のクリーニングやタンパク質の除去およびろ液の回収率を重要とする場合に適した膜です。
- Hydrosart RC膜 :ザルトリウス社独自のセルロースを応用したタンパク質吸着が低く,高回収率の特殊膜素材です。
仕様
各製品の品名をクリックすると該当製品に飛ぶことができます。
申し訳ありませんが、ザルトリウス社のHPが見にくいので、フナコシ社のHPにてURLを添付しています。
ザルトリウス社のページ希望の方はこちらからどうぞ!
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品名 | 試料液量 | 分画分子量 | 膜タイプ | 処理時間 ※1 | 回収率 ※1 | 濃縮 | 推奨遠心力 |
Vivaspin 500 | 5~500μl | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa ・0.2μm | PES | 5分~15分 | 96% | 5μl | 12,000×g |
Vivaspin 2 | ~2 ml | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa ・0.2μm | PES | 8分~12分 | 98% | 8μl | 4,000×g/8,000×g |
Vivaspin 2 | ~2 ml | ・5KDa ・10KDa | CTA | 5分~50分 | 96% | 8μl | 4,000×g/8,000×g |
Vivaspin 2 | ~2 ml | ・2KDa ・5KDa ・10KDa ・30KDa | Hydrosart | 5分~14分 | 98% | 8μl | 4,000×g/8,000×g |
Vivaspin Turbo 4 | 40μl~4 ml | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa | PES | 17分~60分 | 93%~98% | 40μl | 4,000×g |
Vivaspin 6 | 2~6 ml | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa ・0.2μm | PES | – | – | 30μl | 5,000×g |
Vivaspin 15R | 30μl~15 ml | ・2KDa ・5KDa ・10KDa ・30KDa | Hydrosart | – | – | 30μl | 4,000×g |
Vivaspin Turbo 15 | 100μl~15 ml | ・3KDa ・5KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa | PES | 8分~33分 | 94%~98% | 100μl | 4,000×g |
Vivaspin Turbo 15 | 100μl~15 ml | ・5KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa | Hydrosart | 4分~23分 | 89%~96% | 100μl | 4,000×g |
Vivaspin 20 | ~20 ml | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa ・0.2μm | PES | 13分~23分 | 98% | 50μl | 4,000×g |
※1:処理時間と回収率は試料や遠心力によって異なります。詳細は各製品ページを確認してください。
日本ポール/遠心ろ過デバイス
特徴
●高速ろ過により処理時間を短縮します。
●低タンパク吸着性メンブレンにより非特異結合を最小に抑えます。
●低DNA結合性メンブレンによりサンプルロスを最小限にします。
●低濃度試料溶液により高い回収率を得ることができます。
●デッドストップ機構の採用により乾燥固着を防止します。
●デバイスの色分けで簡単に識別が可能。
●低分子対応の1KDaを販売。
ろ過膜
●オメガメンブレン:限外ろ過
●スーポアメンブレン:精密ろ過
仕様
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品名 | 膜材質 | 容量 | 分画分子量 | 処理時間 | 回収率 | 濃縮 | 推奨遠心力 |
ナノセップ & ナノセップMF | ・ナノセップ:オメガ ・ナノセップMF:バイオイナート | 500 μL | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・50KDa ・100KDa ・300KDa ・0.2 μm ・0.45 μm | 5分~15分 | 90%以上 | 15 μL | 14,000×g |
マイクロセップ アドバンス | ・限外ろ過膜:オメガ ・精密ろ過膜:スーポア | 5 mL | ・1KDa ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・100KDa ・0.2 μm ・0.45 μm | 限外ろ過:30分~90分 精密ろ過:1分~3分 | 90%以上 | アングル角度34°: 100 μL アングル角度45°: 80 μL スイングバケット: 65 μL | 限外ろ過膜: 7,500 xg 精密ろ過膜: 14,000 xg |
マクロセップ アドバンス | ・限外ろ過膜:オメガ ・精密ろ過膜:スーポア | 20 mL | ・1KDa ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・100KDa ・0.2 μm ・0.45 μm | 限外ろ過:30分~90分 精密ろ過:1分~3分 | 90%以上 | アングル角度34°: 1.5 mL アングル角度45°: 1.2 mL スイングバケット: 450 μL | 限外ろ過膜: 5,000 xg 精密ろ過膜: 14,000 xg |
ジャンボセップ | オメガ | 60 mL | ・3KDa ・10KDa ・30KDa ・100KDa ・300KDa | – | 90%以上 | 3.5 ~ 4 mL | 3,000 × g |
また、日本ポールは【アクロプレップフィルタープレート】等のプレートタイプも販売しております。
多検体で遠心される方はこちらも確認してみてくださいね。
アプロサイエンス/限外ろ過スピンカラム
特徴
●迅速な試料処理時間
●超音波溶着シールの採用で、濃縮液のリークを防止
●幅広い薬品適合性を持ち、有機溶媒にも耐性
ろ過膜
●ポリエチレンサポート付きタンパク吸着性修飾ポリエーテルスルホン
仕様
容量 | 分画分子量 | 処理時間 | 回収率 | 濃縮 | 推奨遠心力 |
50〜500μL | ・3K ・10K ・30K ・100K ・300K | 5〜10分間 | 90%以上 | – | 14,000×g |
また、脱塩目的で使用されたい方はこちらも参照くださいね。
営業からのおすすめ商品
国内シェアの高いメルク製品と海外でシェアの高いザルトリウス、日本ポール。
供給の安定ではメルク社が一番おススメです。
製品よっては少ないものありますが、多くは在庫が20-50点ほど常時在庫として準備しています。
サンプルによって分画分子量が異なりますが、低分子でされるなら日本ポール一択ですね。
各社キャンペーンで安くなることは少ないので、必要な時に購入しても価格面で損をすることは少ないでしょう。しかし、各社毎年4月頃に価格改定を行いますので、購入のタイミングは注意が必要です。
まとめ
●メルク/Amicon Ultra
●ザルトリウス/Vivaspin
●日本ポール/遠心ろ過デバイス
●アプロサイエンス/限外ろ過スピンカラム
今回はこの4社を紹介させていただきました。
同等品を探すときに大変なこの製品群ですが、今回の記事で少しは楽になるのではないでしょうか?
今後も困ったらこの記事に戻ってきて、製品検討をしてみてくださいね。
他にも小型卓上遠心機やマイクロピペットもまとめていますので、今後の参考にどうぞ!
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